( 論文 ) 女王蜂の地位とは
女王蜂とは何か? 働き蜂との違いは? 巣の中での地位は?
★ ( 疑問1 ) 女王蜂とは何か? 人類から考えた女王の定義
☆ ( 解答 ) 女王蜂とは、一般的に我々の知る知識で考えると、特別な名称で分類された最上位の地位の蜂と考える事が
最も一般的的でしょう 人類に於いての女王とは国を代表するトップの人物であり、その権威と地位は絶対的
です あらゆる決定権や統率権等を持ち、時には命令による行動の強制権も持つ事もあり、事実上その権威
は絶大で国の最大権限者で又、生活面に於いても特別な待遇を受け他の者とは一線を画す存在である事も
今更言うまでもありません。
★ ( 疑問2 ) 蜂の世界に於ける女王蜂と働き蜂との違いは何か?
☆ ( 解答 ) 人間界に於ける女王の存在とは上記のとうりで国の絶対権限者 頂上の地位である事は明らかな事実です
では、蜂の世界に於いての女王とは、実際にどの様な存在なのでしょうか? 一つの巣の中に於いては女王蜂
一匹と複数匹の働き蜂との二種類に分類されていて同一巣の中で常に一緒に生活をしてます 又、外観の違
いでその区別が比較的簡単に判別出来る種類のものもいます。
アシナガバチやスズメバチに於いても、その違いは比較的解り易い種類も多く、同一種に於いては主に女王蜂
は働き蜂よりも体が少し大きくて、中には相当にその差が大きいものや体色や体型の少し違う種も存在します
以下に女王蜂と働き蜂との違いを一覧にしてみました。
◎ 体長 ※女王蜂の方が働き蜂よりも僅かに大きいか種類によると2倍以上も差のある種も存在する
◎ 繁殖 ※女王蜂は雄蜂と交尾を行い受精卵を産む 働き蜂は生涯に於いて交尾を行わない
◎ 冬眠 ※交尾を済ませた女王蜂は冬眠に入る 働き蜂は冬眠を行わないで冬に死ぬ
◎ 寿命 ※女王蜂、約12か月 働き蜂、約2週間~4週間(主に気温に影響される)
★ ( 疑問3 ) 実生活に於ける巣の中での地位は?
☆ ( 解答 ) 最も興味深い最も重要な問題です スズメバチやアシナガバチの世界でも、この女王と言う地位は人間界と
同様に特別な権限や待遇を確保されているのでしょうか? 働き蜂と比較して明らかな生活に於いての差が存在
するのだろうか? 人間界では絶大的な地位を持つ最高位ですが蜂の世界でも?
女王蜂、その言葉から単純に想像される事とは、特に働かなくても良い 全ての仕事は働き蜂の役割 食事は
働き蜂が運ぶ 巣は働き蜂が作る 育児は働き蜂が行う その他の色々な作業や雑用も働き蜂の役割 女王
蜂の主な役割とは産卵のみ こんな感じのイメージを殆ど誰もが持っている事は事実ですね。
では、その真実とは? 確かに巣の内外に於いての色々と多くの仕事は働き蜂も行っている事は明白な事実です
ですが再度、もう一度文章を読み直して下さい!? 私は働き蜂も と書いてます 働き蜂が で無くて働き蜂もです
この言葉には大きな大きな意味が含まれています つまり、どう言う事なのか? と言うと以下に述べる事実です。
前年の秋から冬にかけて新しく産まれた新女王蜂は直ぐに雄蜂と交尾を行って直後に冬眠に入ります 翌年春
に冬眠から覚めた女王蜂はゆっくり休む間も無く数日後には全ての女王蜂は単独で巣作りを開始します この
時、この時期には決して決して一匹たりも働き蜂は存在しません 全ての働き蜂は前年の冬までに一匹の例外
無く全てが寿命を全うして死んでしまってます ですから新年度の春からの巣作りは一切の例外無く必ず女王蜂
単独で行うのです※最も重要な知識です つまり、全ての巣の始まりは女王蜂完全単独で巣作りから産卵育児
餌集めを行い、後日に新しく産まれて来るべく働き蜂となる幼虫を育てるのです しかし、その工程がもっも大変
であって、その種類にもよるが普通女王蜂単独で少なくとも約30匹から50匹もの幼虫を育てなければなりません
しかも、その作業は約60日間も続けなければ最も最初の働き蜂は産まれては来ないのですから、大変な労力と
なります その間毎日、例え雨の日や強風や嵐の日でも一日に必ず数回から数十回も朝から日暮れまで巣と山
や野原等を往復しなければなりません ですからその間に命を落とす女王蜂の数も相当数に及ぶ事も事実です
女王蜂が最も命を落とす時期はこの時期です。
それから約2か月後の事です 最初の働き蜂が産まれると今度は、毎日の様に例え少しずつではあっても次々
に働き蜂の数も増してきますが、なんと、そうなっても我々人間が考えている様な楽な生活は女王蜂には訪れは
しないのです 例えば働き蜂が次々と産まれてやっと10匹を超えたとします、しかし事実上その巣の中で働いて
いるのは女王蜂一匹だけなのです 働き蜂が産まれてきたとは言っても、それらの働き蜂達は直ぐに巣を飛び
立って女王蜂の仕事の手助けを行う事は一切出来ないのです 普通最低でも四日以上は経たなければ上手に
飛ぶ事も出来ません、ですからそれまでは例外無く女王蜂が巣を往復しては働き蜂達にも餌を与えねばなりま
せん 勿論、全ての働き蜂と全ての幼虫にも餌を与えなければならないので逆に仕事は増える一方です。
更にその後になれば働き蜂達もやっと外へ飛び立つ様になって、少し僅かにも女王蜂の仕事の手伝いが出来る
様になりますが、それでも決して決して女王蜂の仕事は一切軽減される事はありません 常に働き蜂の産まれた
巣でも女王蜂は最も最も頻繁に働き蜂の数十倍も外へ出掛けては巣の材料や餌を集めて巣に戻っては巣作り
と育児に専念しているのです それだけではありません 働き蜂への餌も持ち帰っては与えている事も事実です
この間にも勿論当然ながら働き蜂達の数も益々増えて、総合的には働き蜂による仕事量も相当に増加して女王
蜂の手助けも出来る様にはなりますが、それでも女王蜂の仕事量とは全く比較にもなりませんし、更に更にその
仕事を続けながらも毎日に至って、最も体力を消耗する産卵を休む事無く続ける必要が有るのですから女王の
総仕事量は余りにも過酷な事は事実です。
アシナガバチの仲間に至っては、特に雨天の続く日には殆ど巣の外へ出掛ける事がありませんが、それでも
女王蜂だけは雨天にも拘らず朝一番から真っ先に外へ出掛けては幼虫に与える餌や巣に居る働き蜂へも餌を
持ち帰っているのです 勿論、巣の材料も持ち帰っては女王蜂一匹が忙しく働いているのです。 ※雨天以外の
日でも必ず朝一番の外出は女王蜂であって働き蜂は殆ど何もする事無くじっとしている時間が多い。
一日観察に於いては、一日に巣を往復する回数は、女王蜂が20回とすれば働き蜂は5回前後にしか満たない
のです。
こうして特にアシナガバチの仲間の全ての女王蜂は一生涯過酷に労働を続けては最後は体力の極度な消耗で
老衰して僅か一年の命を全うするのです スズメバチの世界も同様でして特に多産系の種類以外のコガタスズ
メバチやヒメスズメバチ等では一生涯に於いて女王蜂は死ぬまで巣から外へ出掛けては巣の内外に於いて働き
続けながらやがて寿命を迎えるのです では多産系のキイロスズメバチやモンスズメバチ、オオスズメバチでは
どうなのか? 例外無く他の種類と同様に過酷な労働を行っているのですが、他の種類のスズメバチと大きく異な
る事は、巣の外に出掛け様にも夏頃からはお腹の中の卵の数が半端でなくなり全く飛ぶ事も出来ない程に体重
が増してしまいます 結果的に外での仕事の全てを働き蜂に任せ、主に産卵に専従する時期に入ります。
こうして全ての仕事を働き蜂達に任せてしまう様に思われますが、実はそれだけでは無くて、産卵中以外は育児
や幼室の増築や整形等のこれまでの作業も兼業している事も事実です その後の秋にもなると殆ど全ての巣で
の多産系の女王蜂の体では羽がボロボロになり、なかには全ての羽が欠損してしまい非常に痛々しいものも多
く見られる様になりやがて死を迎えます。
☆☆☆ まとめ ( 人間界の女王と蜂の世界の女王との待遇の違い )
蜂の世界の女王の存在と 人間の世界の女王とを決して同様に考えてはなりません
この世の全ての生物の生態や行動等を、我々人間界の行動生活に置き換えて考える
事は大きな過ちです 我々人類は、あらゆる情報や過去に積み上げたデータから物事
を考え、感情も含めながらその都度に対応してますが、昆虫達の世界は全く違っていて
根本的に全ての行動は、産まれながらに見に付いている本能だけによって全ての行動
が成り立っているのですから、特に女王を特別な扱いや地位として優遇する行動は一切
有り得ないのです。
※ では、以下に蜂の世界に於ける女王蜂の待遇についての真実を記述いたします
★ 食べ物は巣で待ってれば働き蜂が与えてくれる待遇などは皆無です その都度働き蜂に近寄っては要求し
なければ例え女王であろうとも決して一切に於いて、食べ物は何も与えては貰えません。
★ 巣に危険が迫った時は身を守ってくれる? 何があろうとも働き蜂は巣の幼虫達を守る本能により巣の
幼虫達に対しては命を懸けても守りますが、決して女王蜂を意識したり特別に守る行動等は一切皆無です
例え女王が命を失おうと一切手助けは皆無です 全く知らぬままです 蜂の世界では女王蜂はただの産卵
用の蜂と言うだけの存在感であって決して特別な扱いは皆無なのが現実です。
★ 秋になると新しく産まれる女王蜂の幼虫等を守る為に獰猛になるってホントですか??
最も最も最も自然界の事実から掛け離れた人類の妄想に過ぎません 全ての蜂達は育児中の我が子を
守ると言う、産まれながらの本能によって行動を起こしている事は生物学的にも最も常識です
つまり、女王蜂の幼虫を意識して巣を守っている蜂はこの世に存在致しません 全ての働き蜂達は一切の
区別も差別も無く、働き蜂の幼虫であろうと雄バチの幼虫であろうと女王蜂の幼虫であろうと一切の判断も
出来ません、理解してません つまりその幼虫が何であろうと一切差別なく守り通す本能によって巣を守
っているのであって、決して女王の幼虫が存在してなくても巣を守る性質や防衛力攻撃戦力はいつでも季節
とは無関係に同一です。 ※もう、いい加減に、この誤情報から目を覚まして欲しいですね
◎◎◎ 最後に一言 そろそろ、この辺で 人間界の女王と、蜂の世界の女王との区別をハッキリつける意味でも
改名を是非とも提案させて頂きます
★現行 女王蜂 ☆改名後 母蜂(ハハバチ)
★現行 働き蜂 ☆改名後 姉蜂(アネバチ)
※ 特に改名が必要と考えます 殆ど誰もが働き蜂とは雄蜂と勘違いされてる様なので
★現行 雄蜂 ☆改名後 雄蜂(改名は無用)
文 . 日本スズメバチ研究所 西﨑 健二 ※無断転載 引用 禁止