毎年、夏から初秋にかけて必ずの様に言われるセリフがこれだ!!
今年は猛暑の影響でスズメバチが大発生!! 猛威をふるう!!
これって本当なのだろうか? 猛暑はスズメバチにとって最適環境なのだろうか?
{解答}
事実と全く正反対の誤った情報です
毎年この時期になると必ず口を揃えたかの様に 「今年は猛暑で各地でスズメバチが大発生」 とテレビや新聞等によって騒がれてますね
でも、その真相は意外にも全く逆の話であり、誤った情報なのです つまり、猛暑はスズメバチにとって最悪の生息環境だと言う事なのです
元来より、日本国内に生息する全ての種類のスズメバチは夏でも比較的涼しい環境を好む昆虫であって、営巣最適生育温度は 約30℃
その為、営巣全期の巣内の温度は営巣初期の春先から初冬までを通しても、約30度前後になる様に巣の外被の厚みを増したり夏は巣に
水を持ち込んで冷やしたり、羽を振るわせで巣の中に風を送ったりして常に巣内の温度が一定になる様に調整を行っているのです。
そんな中で、近年は初夏から初秋にかけての最高気温の数値は異常であるとしか言い様がないでしょう 一日の最高気温が40℃超えに
達する事も珍しくない今日この頃ですよね、そんな中だから全国的にも気温35℃越えでも特に驚く事も無く、今では当たり前の夏の気温に
感じられますね。
ところで、スズメバチ自身の生育適温とは何度なのでしょうか? それは先に述べた様に営巣適温と同じ30℃以内位の平均気温なのです
特に32℃を超えるような高気温にもなると極度に体に負担がかかり、33℃を超えると死に至る事もあります ※昆虫は変温動物である為
気温の上昇は直接体温上昇に繋がる つまり、近年の猛暑は、この限界体温までを遥かに超えた気温であり、スズメバチの生息限界気温
を確実に超えた気温が連日の如く続く事で、命に関わる様な大ダメージを被っている事が現実の気温なのです。
だから結果的にスズメバチは、この猛暑の中で多大なダメージを受けていると言う事が現実であって決して否定のできない真相なのです。
この事は実際の巣の営みに対しても現れていて、例え誰が見ても一目瞭然で確認できるほどまでに巣の外見に大きな影響を及ぼしてます
それは何かと言うと巣の大きさで、巣の最終的規模にも明らかに現れてます。
巣は主に4月中旬から営巣開始され特に7月から8月一杯までが、その後の巣の全般的規模を決定する為の一年で最も重要な時期であり
この時期(夏)に如何に多くの働き蜂を生産する事が出来るかで、その後の巣の営みに決定的な影響を及ぼすのです つまり、夏に巣を大き
くする事が出来なかった巣は決して秋以降になっても回復させる事は不可能と言う事なのです 何故なら? 秋になってから新たに産まれてく
る蜂は、その全てが雄蜂と新女王だけなのです つまり働き手はもう全く産まれてこないと言う事なのです これで巣の営みは終了です。
では具体的に猛暑の影響でスズメバチの巣の中では何が起こってるのでしょうか?
{解答}
先に述べた様に、本来ならば夏はその後の巣の全般的営みと、及びに巣の規模を決定する一年で最も重要な時期であり、特にこの時期に
最も大切な作業は一部屋でも多くの育児室を増設する事なのですが、その最大の仕事があるにもかかわらず猛暑の為に作業の一切を巣の
冷却作業に当てなければならないのです、気温が30℃を大きく超えてしまうと働き蜂は極度に元気がなくなり、一切の巣作り作業を止めてしま
います 代わりに巣を冷やす為の水汲みや換気作業に専念する様になるのです、幼虫の餌の為の狩りも殆どしなくなります、巣材運びも全く出
来ないほどの暑さなのです 影響はそれだけではありません 連日に至る猛暑が続くと女王蜂は一切にも産卵しなくなってしまうのです、それど
ころか巣を放棄したり最悪、暑さで死んでしまう女王蜂も珍しくありません 巣を放棄した女王蜂はその後も巣には戻る事は無く、その後に死ん
でしまいます これで良く分かったと思いますが、猛暑は確実にスズメバチの生活に多大なダメージを与えていて、決して間違っても大発生とは
正反対の情況を現実的に生みだしているのが真実なのです。
以上の現実に加えて更に特記すべき異変が近年起こってます、それは営巣の場所ですスズメバチの巣と言えば我々研究者の間でも基本的
には迷う事無く南に面して直射日光の当たる事は無いが、それでも比較的明るく暖かい場所の家の軒下や地面の斜面等に目を向けて探せば
必ず見付ける事が容易だった巣が、近年では間違いなく今までとは真逆の北側で少し暗い様な場所に営巣場所を変えて来た事に異変を感じる
ところです その理由は夏の暑さを避ける為の手段と考えます。
なのに、何故? 毎年この時期になると定説の様にテレビ等で、今年は猛暑でスズメバチが大発生!! だと報じるの??
{解答}
それは、この時期(夏)になると、どの巣も急速に巣が大きくなる為、多くの場合にこの時期になってから初めて巣の存在に気が付いて驚いて慌
てて駆除業者に集中的に相談や駆除依頼が殺到するからです 勿論私の所へも夏になると急に巣に関する駆除相談が集中して入ってきます
特にキイロスズメバチやモンスズメバチ等になるとこの時期に一斉に集中して巣の引っ越しが始まる為、ある日突然に軒下や屋根裏に巣が出来
てる事に気が付き凄く驚く事が多々起こっているのが現状です
つまり、この時期になって初めて一斉に巣の存在に気が付いて行政機関や駆除業者等に駆除依頼や相談が集中的に入る為に、あたかもそれ
が大発生したものと勘違いするの事も仕方のない事実なのですね。
{まとめ}
全国的にスズメバチの発生数は決して間違いなく毎年の様に確実に減少してる事は事実上の結論です
その理由は大きく3つの要素です
☆ 自然環境の悪化 ※開発による確実な自然破壊で餌とする多くの昆虫類の減少
☆ 地球温暖化による最高気温の上昇 ※スズメバチの最も嫌う環境は夏の高気温
☆ 過剰な巣の駆除 ※近年の必要以上の異常な程の巣の駆除が行われている現状
文 日本スズメバチ研究所 西ア健二
テレビ等による情報公開は科学的な根拠に基づいた生態の真実と更には実際に調査した事実を確認したうえで発表しなければ誤った情報を
発信してしまう恐れもあると思いますので、しっかりと情報を集めてから編集する事も大切かと思いますね。
※以上、 このページに関する全ての記述は、そのままコピーしての転載や印刷等により講演活動等で使用する事を許可致してますので適正に
ダウンロードして御利用下さい 日本スズメバチ研究所 西ア健二